
うわぁ…。

どうしたの?

90歳の女性が運転した車が4人を撥ねて、そのうち一人が死亡する事故があってるウホ。

この事故のことね。
乗用車を運転していた90歳の女性は「信号は赤だったが歩行者が渡っていなかったので発進した。歩行者が渡り始めたのが見えたのでハンドルを切った。」と説明している。

色々なニュースを見ていると、運転していた高齢女性は「赤色なのは分かっていたけど、交差点に突っ込んだ」って供述しているみたいウホ。

何で信号無視して交差点に突っ込むウホ?

その理由は前頭側頭型認知症かもしれないね。

前頭側頭型認知症??

今日は前頭側頭型認知症について説明するよ。
前頭側頭型認知症の概要
『認知症ねっと』というサイトには、次のように記述されています。
前頭側頭型認知症(FTD)は、脳の前頭葉と側頭葉が萎縮し、血流が低下することによって、様々な症状が引き起こされる病気です。他の認知症と違い、指定難病に認定されています。
前頭葉と側頭葉は脳の4割を占める重要な器官。前頭葉は思考や感情の表現、判断をコントロールするため、人格や理性的な行動、社会性に大きく関ります。一方側頭葉は、言葉の理解、聴覚、味覚のほか、記憶や感情をつかさどります。どちらも大変重要な働きを担っているので、機能低下による影響は甚大です。
前頭側頭型認知症の初期には物忘れや失語はあまりみられず、人格の変化や非常識な行動などが目立ちます。そのため、精神疾患と診断されてしまう場合があるので、鑑別診断が重要となってきます。
10年前後で寝たきり状態になると言われており、筋萎縮や筋力低下がある場合は、その進行がさらに早いとされています。


普通の認知症と違うウホ!?

そう、前頭側頭型認知症は指定難病に認定されているよ。

物忘れとか失語とか、他の認知症に見られるような症状が出にくいウホね。

そうだね。

物忘れなどの症状が出ない代わりに、「人格の変化」や「非常識な行動をとる」という症状が目立つのが特徴と言えるね。
前頭側頭型認知症の症状
前頭側頭型認知症になると、刺激に対する反応や欲求が抑えられなくなり、本能の赴くまま行動するようになります。

どんなことが起こるウホ?

一般的な変化としては、礼儀に欠ける行動をとったり、暴力をふるったり、社会性がなくなるという点が挙げられるね。

常識がなくなってしまうウホね。

ただ、一つ気をつけたいのが「善悪の判断がつかないわけじゃない」ってことだね。

どういうことウホ?

前頭側頭型認知症では、「悪いことは悪いこと」だとちゃんと分かっているんだよ。

普通の認知症みたいに「自分が何をしているか分からない」という感じじゃないウホね。
例えば、認知症の人が犯してしまう反社会的行為は万引きや痴漢、他人に対する暴力というものが多いです。
一般的な認知症の場合「自分が何をしたか分かっていない」ことも多々あります。
しかし、前頭側頭型認知症の場合は「万引きは悪いことなのは分かっている。でも万引きしたい。やりたいことをやって何が悪いの?」という思考になってしまうのです。

そういえば、今回事故を起こした女性も「赤信号なのは分かっていたけど、突っ込んだ。」って言っていたみたいウホ!

普通なら「赤信号だから止まらないといけない。」という事実を認識すれば、「止まらなければいけない。」という考えが浮かぶはずだよね。

まずは理性によるブレーキがかかるウホ。

もちろん、故意に赤信号を無視する人がいるのは分かっている。

でも、そういう人でも「赤信号で突っ込めば他の車とぶつかるかもしれない」とか「警察に捕まるかもしれない」とかは考えるはず。

自分の身を守らなきゃという本能によるブレーキがかかるウホ。

でも、前頭側頭型認知症の場合は「赤信号だ。止まらないといけない。信号無視は悪いことだ。」と認識できても、理性によるブレーキも本能によるブレーキもかからない。

だから、「悪いのは知っている。でも行きたいから行く!」という行動に出てしまうウホね。
少し前に話題になっていた「高速道路の逆走事故」なんかについても同じです。
普通の人ならば「高速道路を逆走している」と気付いた時点で身の危険を感じて停車するはずです。
しかし、前頭側頭型認知症の場合、「高速道路を逆走している」という事実に気付き「このまま走っていれば危ない」と認識できたとしても、「とにかく先に進みたいから進む」という結論に至ってしまう点でとても危険な病気だと言えます。
どうすれば自動車事故を防げたか?
今回の事故を防ぐために「行政的な措置」は執ることができなかったのでしょうか?
「行政的な措置」、簡単にいうと自動車運転免許の返納です。
ただし、これについて考えられるハードルが三つあります。
行政的な措置のハードル1:運転免許証の取消しが難しい
まずは「行政処分としての運転免許証の取消しが難しい」ということです。
現在の道交法では、75歳以上の者が免許証の更新時に認知機能検査を受けるなどして「認知症のおそれがある」と判断されたときは、行政処分の対象者となる可能性があります。(改正道交法:75歳以上のドライバーを対象にした認知機能検査について)

しかし、前述のとおり前頭側頭型認知症の場合ですと善悪の判断能力は正常であり、単純な認知機能検査では「認知症のおそれがある」とは判断されず、病気が見逃される可能性が高いのです。
行政的な措置のハードル2:免許証を失うことへの心理的な抵抗
行政処分ではなく、自主返納という方法もあるのですが、そこで出てくる二つ目のハードルが高齢者や家族が抱く「免許証を失うこと」への抵抗感です。
今まで与えられていた権利を失うというのは、人に相当な抵抗感を感じさせます。
体力が落ちたり、認知機能が低下していることを自覚していたとしても「事故を起こして他の人に迷惑をかけるかもしれない」という思いよりも「車が運転できなくなったら不便だ」という思いが「免許を手放したくない」という思いを生むのです。

やっぱり郊外都市においては”車が運転できない”というのは死活問題ウホ!

それは分かっているよ。

でも、車に乗り続ける限りは「事故を起こす」というリスクからは逃げられないんだよ。

でも、誰も起こしたくて事故を起こす人なんていないわけだし、そもそも事故を起こす確率なんて高くないウホ?

そんなことないよ!

警察庁の運転免許統計によれば、平成29年の運転免許保有者は82,255,195 人で、交通事故分析センターによると交通事故の発生件数は472,165件となっているよ。

つまり、車の運転者が1年間で交通事故に遭う確率は約0.57%と考えることができる。

な~んだ、とっても低いウホね。

ちなみに、2017年の年末ジャンボの1等の当選確率は0.000005%だよ。

ええっ!

交通事故に遭う確率は年末ジャンボの1等の当選確率よりも11万倍も高いウホ!?

そうだよ。

年末ジャンボの1等に当選する確率よりも、交通事故に遭う確率の方がずっと高いんだ。

だからこそ、「ずっと車に乗り続けて事故を起こすリスクとそれを補うための保険料等のコスト」と「免許を返納した後でかかる交通費等のコスト」を正しく天秤にかけないといけないんだよ。

「宝くじが当たるかも」と思って年末ジャンボを買っている人は、まず「事故に遭う可能性の方が高い」という現実を見つめないといけないウホね。
行政的な措置のハードル3:田舎には自家用車以外の移動手段が乏しい
二つめの理由と重複する部分もありますが、三つめの理由が「自家用車以外の移動手段が乏しい」ということです。
公共交通機関の発達した都市に住む人ならば良いのですが、自家用車のほかに代替の交通手段がないような郊外都市に住む人にとっては、自家用車という交通手段が奪われることは死活問題です。
移動手段がないために”仕方なく”自動車を運転している人もいるのが現状です。
そもそも論として、前頭側頭型認知症の場合、善悪の判断がついても本能のままに行動してしまうことが問題なのです。
運転免許証を返納した場合、正常な判断能力を持っているのであれば「もう免許がないんだから運転してはいけない。」と考えます。
しかし前頭側頭型認知症の場合、「免許を返納したから車を運転すれば無免許運転になってしまう。でも運転したいから運転しよう!」となってしまう可能性があるのです。
また、物理的に運転できないようにするために、免許を返納しただけでなく家にある車も全て売り払ったとしましょう。
それでも「他の人の車を盗むのは悪いことだ。でも車が運転したいから車を盗もう!」となる可能性もゼロではありません。
つまり、今回のような場合に「どうすれば交通事故を防げたか」ということに答えはなくて、絶対的な方法はありません。
病気にちゃんと対処するためには、小手先の対策を行うのではなく、まずは病気と向き合うことから始めないといけないのです。

人権を無視すれば色々な方法が思いつくけど、炎上するのが怖いから自主規制するウホ。

よかった。

ここで自主規制できなくなったら”前頭側頭型認知症”を疑ってたよ。

ひどいウホ!

いやいや、冗談じゃないんだよ。

前頭側頭型認知症は40~60歳代といった比較的若いうちから発病する病気でもあるんだ。

だから、身近な人が非常識な行動をとるようになってきたら、一応の可能性として考慮しておかなければいけないよ。
まとめ
以上、前頭側頭型認知症についてでした。
自分自身や自分の親などの身近な人が認知症などと診断されることは本当につらいことです。
私の祖母も認知症になりました。
私は介護の仕事をしていて認知症の方の相手をしていたので、認知症になった事実を比較的簡単に受け入れることが出来ましたが、私の母はなかなか受け入れることが出来ませんでした。
認知症になったという事実を受け入れた後も、「施設に預けると”あの家は老人の面倒も見ないで…”と後ろ指をさされるから」という理由で働きながら祖母の介護をしていました。
祖母は夜中に家を抜け出して警察に保護されたこともあります。
その時は歩いて家から20キロ離れた自分の生まれ故郷まで行っていました(お金も持っていないのに電車に乗って!)
幸いにも怪我をすることなく発見保護されたので良かったですが、車に轢かれていたり、川に落ち込んでいたりしたら… と考えるとゾッとします。
現在、祖母は施設に入所して生活しています。
私は、祖母が元気にしているのはもちろん、母が介護のストレスから解放されたことも嬉しく思います。
認知症との付き合いに正解はありません。
一人ひとりの相手によって正解は変わるからです。
ただ、正解を導くためには正しい現状分析が必要です。
認知症によって不幸な人を生まないためにも、まずは現状を受け入れることから始めるべきではないでしょうか。
現実から目を背けていては、何も始まりません。
高齢者の介護はとても大変なことで、多大な労力を使うことというのは承知しています。
ですが、同じだけの労力を使うのであれば、一人で抱え込まないで、知人や行政など、使えるものは何でも使って皆が幸せになる方法を探すことに労力を費やして欲しいと思います。