2017年3月12日に施行された改正道交法で、75歳以上の高齢者が自動車運転免許証の更新をする際の規定が見直されました。
一番大きな改正点は”認知機能検査”についてです。
今日は、”認知機能検査”について解説します。
認知機能検査とは
認知機能検査とは、運転免許証の更新期間が満了する日の年齢が75歳以上のドライバーが受ける講習で、高齢者講習を受ける前に済ませておかなければなりません。
認知機能検査を受けることが出来るのは運転免許証の更新期間が満了する日の6月前からで、認知機能検査の対象者には、更新期間が満了する日の6月前までに認知機能検査と高齢者講習の通知が警察から届くこととなっています。
認知機能検査の概要
記憶力や判断力を測定する検査のことです。
認知機能検査は、公安委員会(警察)又は委託を受けた教習所等で受けることができ、約30分ほどで終わります。
認知機能検査では「時間の見当識」、「手がかり再生」、「時計描画」という3つの検査を行います。
時間の見当識
検査時の年月日や曜日、時間を回答する検査です。
手がかり再生
一定のイラストを記憶してもらい、採点とは関係のない課題をおこなった後に、記憶しているイラストについて回答する検査です。
時計描写
時計の文字盤を描いた後で、その文字盤に指定された時刻を表す長針・短針を描き込む検査です。
詳しくは警察庁の「認知機能検査について」を確認してください。
従前の制度について
改正前の道交法では、認知機能検査の結果で3つのグループ分けがされていました。
第1分類
「認知症のおそれあり」とされる人たちのグループです。
一定の交通違反をした場合に医師の診断(又は臨時適性検査)を受けることを義務付けていました。
しかし、認知症のおそれがあると判断されてもその多くは医師の診断を受けることなく、認知症であるか判明しないまま運転を継続していました。
第2分類
「認知機能低下のおそれあり」とされる人たちのグループです。
第1分類にグループ分けされた人と違って、一定の交通違反をしたとしても医師の診断を受ける必要はありません。
第3分類
「認知機能低下のおそれなし」とされる人たちのグループです。
第2分類にグループ分けされた人と同じように、一定の交通違反をしたとしても医師の診断を受ける必要はありません。

この制度の何が問題だったウホ?

第2分類、第3分類と判定された人は、一定の違反をしたとしても次回の免許更新時(3年後)まで認知機能検査や適性検査を受けなくていいってことだよ。

認知症って急激に進行したりもするのに、3年間も放っておいて大丈夫ウホ?

大丈夫なわけない!
認知機能が低下している人が車を運転することは、とても危険極まりないことだよ。

たしかに、自動車で事故を起こせば簡単に人は死んでしまうウホね…。

認知機能が低下した高齢者を早期発見できるように、2017年の道交法改正がおこなわれたんだよ。
改正後の制度について
主な改正点は次のとおりです。
臨時認知機能検査の導入
これまでは、認知機能検査の結果「第1分類」と判定された人が一定の交通違反をした場合に臨時適性検査の対象とされていました。
しかし、今回の改正によって、75歳以上のドライバーが認知機能の低下が疑われる一定の違反行為をした場合には、分類に関わらず臨時適性検査が行われることとなりました。

75歳以上のドライバーが免許の更新前に受ける認知機能検査に加えて、一定の違反をした場合には臨時認知機能検査が行われるウホね!
政令で定められた、信号無視などの18形態の違反を指します。
臨時高齢者講習の導入
臨時認知機能検査を受けた人が一定の基準に該当する場合は、臨時認知機能検査の結果に基づいて臨時高齢者講習を行うようになりました。

臨時高齢者講習を受けなかったらどうなるウホ?

通知を受けた日の翌日から1ヵ月以内に、政令で定めるやむを得ない理由もなく受講しなかった場合は、免許の取消し又は免許の効力の停止という行政処分がされるよ。
臨時適性検査又は医師の診断書の提出の義務化
認知機能検査(臨時認知機能検査)を受けた人が、認知症のおそれがあることを示す一定の基準に該当した場合は、臨時適性検査を実施する又は医師の診断書を提出しなければならなくなりました。

何が変わったウホ?

まず一つ目の改正点は、認知機能検査で「認知症のおそれがある」とされた場合、違反行為の有無にかかわらず臨時適性検査や医師の診断書の提出命令の対象となったことだね。

これまでは一定の違反をした場合だけが対象となっていたウホね。

二つ目の改正点は、通知書に記載された期日までに、政令で定めるやむを得ない理由もなく臨時適性検査を受検しなかった場合や、医師の診断書を提出しなかった場合は、免許の取消し又は効力の停止となるということだよ。

臨時適性検査を拒否した場合の罰則は設けられていないけど、行政処分があるから運転免許を継続して保有したい場合は臨時適性検査などを受けなければならなくなったんだ。
まとめ
最近では「ブレーキとアクセルの踏み間違いによる事故」「高速道路の逆走事故」など、認知症によると思われる高齢者の事故が大きく取りざたされるようになっています。
警察庁によると、平成28年に運転免許証の更新時の認知機能検査を受けた75歳以上の高齢者は約166万人いたそうですが、そのうち約5.1万人は認知機能が低下して認知症のおそれがある第1分類と判定されているそうです。
しかし、認知機能検査は「時間の見当識」「手がかり再生」「時計描写」といった簡易的なものであるため、実際の認知症予備軍はもっと多いと推察されます。
また、平成28年の交通事故死者数は3,904人で、高齢者の占める割合は54.8%でした。
75歳未満の運転者と比較すると、75歳以上の運転者の死亡事故件数は免許人口10万人当たりの件数が2倍以上多く発生しているという統計もあります。

行政的な措置も当然必要ですが、それだけでは事故を防ぐには不十分です。
一番大事なのは高齢の運転者自身、またその家族が「車の運転には危険が伴う」という当たり前のことを認識することだと思います。