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時間的経過から考える犯罪の形態。未遂犯と不能犯について解説!

刑法:総論

刑法第43条には、次のような規定があります。

刑法第43条
犯罪の実行に着手して、これを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。ただし、自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。

 

ハルコ
ハルコ博士

ゴリップルは”未遂犯”と”不能犯”の違いって分かる?

ゴリップル
ゴリップル

”未遂犯”は知らないけど”不能犯”は知ってるウホ!

相手をマインドコントロールして殺すことウホ!

うーん、ちょっと違うかな。

じゃあ、今回は”未遂犯”と”不能犯”について解説するよ。

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未遂犯

意義

未遂犯とは、犯罪の実行に着手したものの、何らかの事情によって行為が中途で挫折したり、行為自体は終了したものの結果が発生しなかった場合をいいます。

刑法は、各本条において、犯罪の実行に着手し構成要件的結果を発生させた場合を”既遂”としており、これを基準にして法定刑を定めています。

しかし、一部の犯罪においては「未遂を罰する」旨の規定が置かれており、そうした場合には”未遂”であっても処罰されます。

犯罪の時系列から考える未遂犯

未遂犯は、時間の流れに沿った犯罪の段階的なものとして捉えることもできます。

1 AがZを殺すことを決意した。
2 AがBに対してZの殺害計画を持ち掛け、二人で計画を練り上げた。
3 AとBが犯行に使うナイフの購入資金を用意したり、現場の下見を行った。
4 AとBが犯行に使用するためのナイフを購入し、Zの自宅付近でZが返ってくるのを待ち伏せした。
5 Zが帰宅したため、AとBがZにナイフを突き刺した。
6 ナイフで刺されたことによって出血多量となり、Zが死亡した。

上記のように犯罪を段階的に考えた場合、1と2の段階(計画)では犯罪は成立しません。

3の段階(実行準備行為)でも通常ならば犯罪は成立しません。

ただし、組織的犯罪集団が、重大な犯罪を計画しその計画を実行するために準備行為をした場合には「テロ等準備罪」に該当します。

4の段階(予備)でも、犯罪の実効の着手には至っていません。

刑法は、原則として予備行為を処罰の対象としていませんが、特定の重大犯罪(殺人、強盗、放火など)に限って例外的に処罰することとしています。

5の段階では、生命を奪う危険性のある行為を開始しています。

このように犯罪の結果発生の危険性のある行為を実行行為といい、実行行為の開始を実行の着手といいます。

実行の着手があれば”予備”の段階を越え、構成要件的結果が発生しなくても未遂罪が成立します(事例の場合では殺人未遂罪が成立します)。

6の段階では、”死亡”という構成要件的結果が発生していますので、刑法大199条に規定されている行為は既遂となり、殺人(既遂)罪が成立します。

未遂の要件

未遂犯が成立するためには、次の2つの要件を満たす必要があります。

犯罪の実行に着手したこと

実行の着手については、「犯意がその遂行的行為によって確定的に外部に現れたとき」とする主観説と、「構成要件に該当する行為の一部が開始されたとき」とする客観説があります。

判例は「基本的構成要件に属する行為に着手すること、あるいはこれに直接密接する行為を行うことが実行の着手である」(大判S9.10.19)として客観説の立場をとっています。

どの時点で「実行の着手」が認められるウホ?

具体的な状況のもとで判断されるから、一概に言うことはできないね。

「実行の着手」が認められた判例はたくさんあるけど、主なものを紹介しておくね。

 

〇 窃盗罪(空き巣)
窃盗の目的で人の家屋に侵入し、財物を物色したとき(最判S23.4.17)
〇 窃盗罪(すり)
ポケットに手を差し伸べ、その外側に触れたとき(最決S29.5.6)
〇 強姦罪(強制性交等罪)
強姦の意図をもって自動車の運転席に引き摺り込んだとき(最決S45.7.28)
〇 放火罪
家屋を焼損する目的で、ガソリンを室内全体に撒いたとき(横浜地裁S58.7.20)

犯罪が完成する(既遂)に至らなかったこと

未遂犯は、犯罪の不完成を前提としています。

行為者が主観的に目的とした事実を完成しないときでも、客観的に構成要件を充足していれば既遂となります。

どんな場合があるウホ?

たとえば、ゴリップルが「親の仇に対して拷問を加えた後に殺したい」と思っている復讐者だとするよ。

「人誅」ウホ!

で、ゴリップルが満足いく拷問を加える前に、相手が死んでしまったらどんな気持ちになるかな?

まだ足りないウホ!

こんなもんじゃ恨みは晴らされないウホ!

この場合、ゴリップルの気持ち的(主観的)には目的を達成していないけど、親の仇を殺すという行為は、客観的には殺人罪の構成要件を満たしていると言えるよね。

主観的にはまだまだやり足りない場合であっても、客観的事実として構成要件を満たしてしまえば、その行為は既遂として処理されることになるんだ。

未遂犯の種類

態様による区別

着手未遂

実行行為に着手したが、行為自体が終了していない場合を着手未遂といいます。

どんな場合が着手未遂になるウホ?

「ナイフを突き刺して人を殺そうとしたけど、ナイフを刺す前に止められた場合」は、実行行為が終わっていないから”着手未遂”になるよ。

実行未遂

実行行為は終了したものの、結果が発生しない場合を実行未遂といいます。

 

実行未遂はどんな場合ウホ?

「人を殺すつもりでナイフを突き刺したけど、病院に搬送されたことで一命を取り留めた場合」は、実行行為自体は終了しているけど、結果が発生していないよね。

こういう場合を”実行未遂”というよ。

原因による区別

障害未遂

自分の意思によらないで未遂となった場合を障害未遂といいます。

この場合、刑を減軽することもできますが、事情によっては既遂と同じ刑を科すこともできます(任意的減軽)。

「ナイフを突き刺して人を殺そうとしたときに、ナイフを突き刺す前に止められた場合」は”障害未遂”になるウホ!

そうね。

「人を殺すつもりでナイフを突き刺したけど、病院に搬送されたことで一命を取り留めた場合」も障害未遂になるよ。

中止未遂

自分の意思で行為を中止した場合を中止未遂といい、この場合は必ず減軽又は免除することとなっています(必要的減軽)。

何で中止未遂は”必要的減軽”になっているウホ?

理由は2つあるよ。

1つは、犯罪の実行に着手してしまったとしても、その犯人が必要的減軽の規定を知っていれば犯罪結果の発生の防止が期待できるからだね。

もう1つは、中止行為によって実害が防止されることで、社会一般からの加害者への非難の程度が弱まり、理論的には障害未遂の場合よりも違法性・有責性が軽くなるからだよ。

中止未遂が認められれば、犯人にとっては有利になるというわけウホね。

自分の意思で犯行をやめるだけで中止未遂になるウホ?

違うよ!犯行をやめるだけではダメだよ!

”中止未遂”が認められるためには、次の要件を満たさないといけないよ。

・中止の任意性

犯罪の中止は任意に為されなければならず、その事情は悔悟、同情、憐憫等が一般的に考えられます。

「人をナイフで刺した後に、出てきた血を見て怖くなったから犯行をやめた」という場合でも大丈夫ウホ?

それじゃダメ!

恐怖心や嫌悪感等に基づいて犯行を中止した場合は、”任意に犯行を中止した”とは認められないんだよ。

・結果の不発生

犯罪の結果防止のため、真摯な中止行為を執る必要があります。

つまり、単に行為を中止しただけでなく、進んで結果発生を防止することが必要となります。

また、構成要件的結果が発生していないことが必要であり、結果が発生してしまえば未遂犯は成立せず、”結果発生を防止しようとした行為”が犯情として考慮されるにとどまります。

何だか分かったような、分からないような…

「しようと思えばできたが、あえてしなかった場合」 は任意性が肯定されて中止未遂となるけど、「したかったが、できなかった場合」は任意性が否定されて障害未遂となるって覚えとけばいいよ。

予備行為と中止未遂

判例によれば、予備罪は予備行為によって直ちに犯罪が完成し、中止未遂の観念を入れる余地がないとして中止犯規定の適用を否定しています(最判S29.1.20)

不能犯

意義

犯罪を実行する意思があり、その意思に基づく実行の着手があるものの、そもそも当該行為による結果発生の危険性が極端に低く、未遂として処罰に値しない場合を不能犯といいます。

通説・判例は、行為時に一般人が認識し得た事情及び行為者が特に認識していた事情を基礎に、一般人を基準にして具体的危険性の有無を判断する立場にあります。

なお、不能犯についての規定は刑法典上にはありません。

不能犯の種類

方法の不能

行為の性質上、初めから結果発生の危険性がない場合のことをいいます。

じゃあ、”致死量とはならない青酸カリを飲ませる行為”は、殺人の結果発生の危険性がないから”不能犯”ウホね!

それは違うよ!

青酸カリの場合だと、被害者の体力が弱まっている等の場合には致死量に達していなくても生命に関わる危険性もあるよ。

そうした具体的事情を考慮して、結果発生に至る危険性が認められるときは、不能犯でなく”殺人未遂”となるよ。

客体の不能

行為の客体が現存しないため、そもそも結果発生の危険性がない場合をいいます。

どんな場合があるウホ?

Aさんを殺すためにAさんの家に拳銃を打ち込んだけど、そもそもその家が空き屋だった場合は”客体の不能”になるね。

不能犯に関する判例

不能犯の成立が認められた事例

・殺害する目的で硫黄を飲ませた行為(大判T6.9.10)

硫黄の使用は、殺人の手段として絶対不能であるから、殺人罪としては不能犯であるとし、下痢を起こさせた点で傷害罪になるとしています。

・覚せい剤の製造に用いた主原料が、真正の原料でなかった場合(東京高判S37.4.24)

主原料が真正の物でなかったため覚醒剤の製造に失敗した場合は、結果発生の危険は絶対に存在しないとして、覚醒剤製造未遂罪が成立しないと判示されています。

不能犯の成立が認められなかった事例(未遂罪とされた事例)

・人を殺す目的で、致死量に達しない量の空気を静脈に注射した行為(最判S37.3.23)

不能犯ではなく、殺人未遂罪が成立すると判示されています。

・殺意を持って、警察官から奪った拳銃の引き金を引いたが、たまたま拳銃に弾丸が込められていなかった場合(福岡高判S28.11.10)

この場合も、不能犯ではなく殺人未遂罪が成立するとしています。

・覚せい剤の製造を試みたが、触媒の量が足りず、覚せい剤が完成しなかった場合(最決S35.10.18)

前記「主原料が真正の物でなかったため覚醒剤の製造に失敗した場合」とは異なり、不能犯ではなく、覚せい剤製造罪の未遂犯が成立すると判示されています。

まとめ

”未遂犯”と”不能犯”、少しは違いが分かったかな?

”不能犯”は処罰されないというのは分かったウホ。

つまり、漫画のように相手をマインドコントロールすれば犯罪はやり放題ウホね?

そうとも言えないよ。

次の判例を見てみて。

 1.愚鈍な被害者を錯誤に陥れ、容易に蘇生し得ると誤信させて首吊り自殺をさせた場合(大判S8.4.1)
2.追死する意思がないのに追死するように装い、その旨誤信した被害者をして毒薬を飲ませて死亡させた場合(最判S33.11.21)

 

これは殺人罪の間接正犯が認められた判例だよ。

マインドコントロールとは違うけれど、1の場合も2の場合も”騙されて自殺した”という点では同じウホ。

そう。

これらの行為は、”騙した行為”と”被害者が自殺した行為”に因果関係を認めて、殺人の間接正犯を認めているんだ。

”騙した行為”を”マインドコントロール”に置き換えれば、どうなるかは分かるよね?

間接正犯が成立するウホ!

そうだね。

だから、因果関係さえ証明できれば『不能犯』という漫画は成立しなくなってしまうってワケ。

間接正犯については、また別の機会に話すことにするよ。

参考文献

この記事を書いた人
ゴリップル

不労所得での生活を夢見るオスゴリラ。マッサージと節約が大好き。サビ残は大嫌い。職場で『ふるさと納税』『iDeCo』『つみたてNISA』の普及活動を推進。仮想通貨投資では10年先を見据えてXRP(リップル)に投資中。詳しいプロフィールはこちら

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