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「わざと」じゃなければ犯罪じゃない? 過失(過失犯)について解説

刑法:総論

「罪を犯す意思がない行為は、罰しない。」と規定されているとおり、”故意”がない行為については原則として処罰されません。

しかし、刑法第38条第1項の但書きには、次のような記述があります。

刑法第38条第1項
罪を犯す意思がない行為は、罰しない。ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない。

言い換えれば、故意に犯した犯罪でない限りは、法律に特別の規定がなければ罪に問われないということです。

もっと簡単に言うならば、”わざと”した場合でなければ犯罪は成立しないということです。

ゴリップル
ゴリップル

じゃあ、”わざと”じゃない場合(故意がない場合)はどうなるウホ?

ハルコ
ハルコ博士

刑法第38条第1項の但書きにあるとおり、法律に特別の規定がある場合には罪に問われることになる可能性があるよ。

今回は、”特別の規定”である”過失(過失犯)”について解説するよ!

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過失

過失の意義

過失とは不注意を意味し、不注意とは注意義務に違反することをいいます。

言い換えると、刑法が意味する”過失”とは注意義務を怠った一定の作為又は不作為のことです。

不注意な行為によって、構成要件に該当する違法な結果を発生させた犯罪を「過失犯」といいますが、刑法第38条第1項のとおり、過失犯が罰せられるのは法律に規定がある場合に限られます。

過失の類型

認識ある過失

結果が発生するかどうかについて、不確定にしか認識していない場合を「認識ある過失」といいます。

この時の行為者は「もしかすると結果が発生するかもしれないが、おそらく発生しないだろう」という心理状態にあります。

この「認識ある過失」と混同されやすいのが「未必の故意」です。

両者は、結果発生の可能性を表象・認識している点では同じですが、表象・認識した結果発生の可能性を認容しているかどうかが大きな違いです。

違いが分かりやすいように、「未必の故意」の時と同じ例を使って説明しましょう。

小学生の通学路となっている狭い道を、時速100キロメートルのスピードで車を運転しているあなたは、「もしかしたら子供が飛び出してくるかもしれない」「そんな道を猛スピードで走れば事故を起こすかもしれない」ということについての認識はあります。

この場合に、「猛スピードで車を走らせたら、子供が飛び出してきた場合に車で撥ねてしまうかもしれないが、飛び出してくるような奴は轢いても構わない!」というような心理状態で車を運転して結果を発生させれば「未必の故意」が認められます。

しかし、「猛スピードで車を走らせたら、子供が飛び出してきた場合に車で撥ねてしまうかもしれないが、自分の運転技術があれば子供が飛び出してきたとしても避けることが出来るだろう。」と思いながら、飛び出してきた人を撥ねてしまったような場合には「認識ある過失」が認められることになります。

もちろん、裁判における事実の認定は行為者の主観的な要素だけでなく、客観的な要素も総合して判断されることになるよ!

認識なき過失

犯罪事実の認識・認容が全くない状態で構成要件的結果を発生させてしまった場合を「認識なき過失」といいます。

たとえば、授乳中の母親が居眠りをしてしまったことで乳児が窒息死したような場合が「認識なき過失」が認められる例として挙げられます。

先ほどの例でいうと、「居眠りをするつもりはなかった」「赤ちゃんが窒息死するとは思わなかった」という心理状態ではなく、「授乳の途中で居眠りをするかもしれない」「居眠りをしたとしても赤ちゃんが窒息死することはないだろう」という心理状態ならば「認識ある過失」が認められます。

しかし、「居眠りをすることで赤ちゃんが窒息死するかもしれないが、死んでも構わない」という心理状態ならば「未必の故意」が認められることとなります。

重過失

注意義務違反の程度が著しい場合を重過失といいます。

重過失に該当するかどうかは、発生した結果の重大性ではなく、注意義務違反が重大かどうかで判断されます。

”注意義務違反が重大”というのは、どういうことウホ?

僅かな注意を払えば容易に危険を防止できたのに、それを怠ったため、結果の発生を回避することが出来なかった場合のことをいうよ。

どんな場合が重過失になるウホ?

たとえば、散歩中の飼い犬が突然通行人に飛び掛かった場合(名古屋高判S36.7.20)は”過失傷害”とされているよ。

一方で、犬小屋の鍵を閉めなかったことで飼い犬が人に危害を加えた場合(東京高判H12.6.13)には重過失にあたるとしているね。

業務上過失

業務上過失とは、業務上必要な注意を怠ったことによって結果を発生させた場合のことをいいます。

社会通念上、一定の危険業務に反復して従事する者には、一般の人よりも高度な注意義務があるのは当然のことです。

その注意義務に違反した場合には、業務上過失として、通常の過失犯よりも重く処罰されることとなります。

”業務”って、簡単に言うと仕事のことウホ?

ここでいう”業務”とは、人が社会生活上の地位に基づいて反復・継続して行う行為で、かつ、一般に、人の生命・身体に対する危険を伴うものをいうよ。

この”業務”が適法であるか否かは、業務上過失の成立に影響がないんだ。

反復・継続して行う行為で、かつ、一般に、人の生命・身体に対する危険を伴うものを業務というウホね?

”業務上過失”というからには、何度も繰り返し行う過程で発生する必要があるウホ?

つまり、今日初めて業務についたという人がミスをしても”業務上過失”にならないウホね?

そうじゃないんだ。

反復・継続する意思がある限り、たまたま1回目の行為で結果の発生を招いたとしても、業務上過失の成立を妨げないというのが判例の立場だよ。

過失犯の成立要件

注意義務違反であること

注意義務違反の有無は、一般通常人の注意能力を基準として判断されます。

注意義務の根拠

注意義務の根拠は、法令、内規、規定だけではありません。

契約、慣習、条理等、様々な根拠から生じるものであり、また、個々具体的な事情に応じて決定されます。

注意義務の内容
結果予見義務

結果予見義務とは、その具体的状況下において、結果の発生を予見・表象すべき義務のことをいいます。

たとえば、見通しの悪い道路を車両で進行する際には、「物陰から子供が飛び出してくるかもしれない。」ということが”予見・表象すべき義務”にあたると言えます。

結果回避義務

結果の予見に従って、結果の発生を回避するための必要・適切な行為をなすべき義務のことをいいます。

たとえば、「物陰から子供が飛び出してくるかもしれない。」という予見に基づいて、「飛び出してきた場合でもぶつからないように、すぐに止まれる速度で進行しよう(徐行しよう)。」というのが”必要・適切な行為をなすべき義務”と言えます。

期待可能性があること

その具体的状況の下で、注意義務を尽くすことが当然に期待でき、かつ、結果発生を防止し得る適当な安全措置を執ることが期待できたことをいいます。

イマイチ分からないウホ。

さっきの例でいうと、日常生活において、見通しの悪い道路を車で走っているときには「物陰から子供が飛び出してくるかもしれない。」という予見と、「飛び出してきた場合でもぶつからないように、すぐに止まれる速度で進行しよう。」という結果回避義務に基づいて、「物陰から子供が飛び出してきた場合でもぶつからないように、徐行しよう。」と行動するのが期待可能性ね。

じゃあ、同じように見通しの悪い道路を車で走っているときに、突然人が空から落ちてきて、車で撥ねてしまった場合はどうだと思う?

何もない所で空から人が落ちてくるなんて、そんなの予想できないウホ。

そう、空から人が落ちてくるなんてことは、通常の生活を送っていては考えもつかないようなことよね。

このような場合には、「注意義務を尽くすことが当然に期待でき、かつ、結果発生を防止し得る適当な安全措置を執ることが期待できた」とは言えないから、期待可能性はないということになるね。

“結果予見義務違反”や”結果回避義務違反”と、”発生した結果”に因果関係があること

行為者の行為によって、構成要件に該当する一定の結果が発生したことをいいます。

構成要件に該当する違法な行為があったとしても、結果が発生しなければ”既遂”とはなりません。

判例は、因果関係については条件説を堅持しています。

つまり、「注意義務違反がなかったならば、その結果が生じなかった。」というものについて因果関係を認めています。

相当因果関係説? 条件説? 原因説? 因果関係について解説
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過失犯の共同

段階的過失

同一人による複数の過失行為が段階的に存在している場合のことをいいます。

たとえば
・子供から目を離してはいけない
・子供がいるときは部屋の鍵をかけておかなければいけない
という就業規則がある幼稚園でAさんが働いている場合を想定します。

就業規則は”子供が部屋を抜け出して怪我をしないための注意義務”といえます。

Aさんが勤務中、預かっている園児はZ君しかいませんでした。

Aさんが少し目を離した隙に、Z君は鍵が掛かっていなかった部屋から抜け出し、幼稚園の近所にある池に転落してしまい、一時意識不明となってしまう事故が発生しました。

この時、Aさんが目を離していたとしても、部屋の鍵をかけていればZ君は外に出らずに事故は起きなかったはずです。

逆に、部屋の鍵をかけ忘れていたとしても、AさんがZ君から目を離さなければ事故は起きなかったでしょう。

しかし、想定の場合、AさんはZ君から目を離してしまったわけですし(過失1)、鍵をかけるのも忘れてしまっていたため(過失2)、今回の結果が発生してしまいました。

つまり、目を離してしまった(過失1)部屋の鍵をかけていなかった(過失2)という同一人の複数の過失行為が段階的に存在して結果を発生させてしまったのです。

こういう場合のことを段階的過失といいます。

過失の競合(過失の共同正犯)

複数人の過失が競合して結果を発生させた場合や行為者に共同注意義務があるときは、過失行為の競合が認められ、過失犯の共同正犯も成立します。

同時的競合

数名の行為者の過失が、同時に競合する場合を同時的競合といいます。

この場合、各過失の優劣は因果関係の認定をするうえでは問題とはなりません。

先ほどの保育園の例で、今度はAさんとBさんが一緒に働いていた時を想定してみます。

Z君が幼稚園の部屋を抜け出して池に転落する事故が発生した場合、AさんもBさんも同じように就業規則(子どもから目を離さない、鍵をかけておく)を守っていなかったことになり、過失の同時的競合が存在していることとなります。

累加的競合

数名の行為者の過失が、時間的に連鎖・累加して競合する場合を累加的競合といいます。

この場合には、先行者・後行者の各過失と、結果の因果関係が肯定されます。

先ほどの保育園の就業規則を少し変更して
・Aさんは、いかなる時も子供から目を離してはいけない
・Bさんは、子供がいるときは部屋の鍵をかけておかなければいけない
と決められているとします。

当然、どちらも守られるべきものですが、仮に一つが守られていなくてもどちらか一つが守られているならば、想定のような事故は起きないでしょう。

この幼稚園でZ君の転落事故が発生するとすれば、Aさんが子供から目を離した(Aさんの過失)Bさんが部屋の鍵をかけていなかった(Bさんの過失)という過失が連鎖しなければなりません。

このように、数名の行為者の過失が時間的に連鎖・累加して競合する場合を累加的競合といいます。

未遂の場合の処罰規定

刑法典上には、過失の未遂犯に対する処罰規定はありません。

まとめ

”わざと”(故意)だけでなくて”うっかり”(過失)まで処罰されるなんて、日本の刑法は厳しいウホ。

過失犯は、基本的には重大な結果をもたらす犯罪について規定されているので、全ての”うっかり”が罪に問われるわけではないよ。

実際に、暴行罪には過失犯の処罰規定はないからね。

じゃあ「手が滑った。」と言えば、わざとじゃないから相手にバスケットボールをぶつけても問題ないウホ!

名作バスケットボール漫画『SLAM DUNK』の流川楓が不良たちと対峙したシーンのことかな?

「手が滑った。」と言って口では過失を装っても、客観的状況で故意が認められれば暴行罪が成立するよ!

また、暴行罪には過失の処罰規定はないけど、過失による暴行で相手に傷害を負わせた場合には、過失傷害罪が成立して処罰の対象となるから注意が必要よ!

参考文献

この記事を書いた人
ハルコ

イラストを描くのが得意なアラサー主婦です。文章を書くのは苦手です。
以前は介護の仕事をしていましたが2017年7月に長男を出産したため、現在は職場を離れて専業主婦になっています。子育てで長男と格闘中。
詳しいプロフィールはこちら

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