
新潟では小学2年生の女の子が殺される痛ましい事件があったウホ。

自殺を装うために、殺害後に遺体を線路に放置していたっていうんだから、鬼畜の所業と言わざるを得ないわね。

今日は、犯人の逮捕罪名である死体損壊罪や死体遺棄罪などについて解説するよ。
「死体等損壊・遺棄・領得罪」の条文
死体遺棄罪等は、刑法第190条で規定されています。
死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、三年以下の懲役に処する。
犯罪の主体
特に制限はありません。
犯罪の客体
「死体」、「遺骨」、「遺髪」、「棺に納めてある物(棺内蔵置物)」が本罪の客体となります。
死体
死亡した人の身体をいいます。
死者の身体の一部(例えば臓器など)であっても本罪の対象となります(大判T14.10.16)。
胎児の死体も人の形態を備えている以上、妊娠月数にかかわらず本罪にいう死体として扱われます(大判S6.11.13)。

そもそも「死亡する」ってどういうことウホ?

死亡の時期については、「脈拍の不可逆的停止」「自発呼吸の不可逆的停止」「瞳孔散大と対光反射消失」という徴候を総合して判断することになっているよ。

また、平成9年に「臓器の移植に関する法律」が施行されたことで、同法の規定に基づき臓器の摘出が予定される『脳死した者の身体』も死体に含まれることとされているよ。
遺骨
遺骨とは、死者の祭祀・記念のために保存し、又は保存すべき骨骸のことをいいます(大判T10.3.14)。
したがって、骨揚げ(火葬を行った後に箸で遺骨を拾い、骨壺に納めること)の後、風俗・習慣に従って火葬場に遺留し、その処分を火葬場の係員に任せた骨片などは本罪にいう遺骨には当たりません(大判M43.10.4)。

死体や遺骨から脱落した金歯などは、どういう扱いになるウホ?

金歯には、財産的価値が認められているんだ。

だから、死体損壊等の客体ではなくて、財物として窃盗罪の客体になるという判例(東京高判S27.6.3)もあるよ。
遺髪
遺髪とは、死者の祭祀・記念のために保存しているもの、又は保存すべき人の頭髪のことをいいます。

カツラはどうなるウホ?

カツラは遺髪には該当せず、次に説明する「棺に納めてある物」に該当すると思うよ。
棺に納めてある物
死体や遺骨、遺髪と一緒に棺の中に納められた死者の遺愛品等の副葬品のことをいいます(大判T8.3.6)。

副葬品って、どんなものがあるウホ?

死者が生前愛用していた「メガネ」だったり、大切にしていた「写真」だったり… 色んなものが副葬品になるよ。
保護法益
本条の保護法益は、社会的秩序・風俗としての一般的宗教感情、習俗及び宗教的平穏とされています。

死体や遺骨、遺髪そのものが保護法益じゃないウホね!
犯行の態様
刑法第190条で禁止されている行為は、死体等を「損壊」「遺棄」「領得」することです。
損壊
物理的に損傷・破壊することをいいます。
死体をバラバラに切断するなどの行為が、死体損壊の典型例といえます。

他人を利用して死体を損壊しても、犯罪が成立するウホ?

もちろんだよ。

今回の事件のように、線路上に遺体を置いて列車に轢過させて損壊するのは「他人の力を利用」することの典型だね。
遺棄
本罪でいう遺棄とは、社会通念上の埋葬の方法によらないで、現在遺体がある場所から他の場所に移して放棄することをいいます。
死亡の現場から死体を自動車で運び出し、人が容易に発見できない場所に放棄したり、山中に埋める行為は遺棄の典型例です。

線路の上に放置する行為も、当然遺棄になるウホね!

そのとおり。
作為による遺棄
山中に遺体を埋める等の行為が遺棄に該当するのは理解できると思います。
では、自分が殺害した死体を自宅の床下に埋めて、その冥福を祈ったりして外形上は手厚く弔っているような場合はどうでしょうか?
判例(最判S24.11.26)では、このような場合であっても、通常の埋葬を行っていなければ死体遺棄罪が成立するとしています。
・殺人の犯跡隠蔽のため共同墓地に埋めた場合(大判S20.5.1)
・分娩直後の新生児を殺害し、自宅裏に穴を掘って埋めた場合(東京高判S26.11.20)
・殺害した死体を布団袋に詰め、駅で発送を委託して遺体を職員に引き渡し、駅構内に放置した場合(東京地判S32.11.18)

死者の遺灰を海や山に散骨する、いわゆる自然葬についても死体遺棄になるウホ?

自然葬については、本罪の保護法益である宗教感情、習俗及び宗教的平穏に反するものではないから、死体遺棄罪には該当しないとされているよ。

ただし、死体や遺骨をそのまま放棄する場合は死体遺棄罪が成立する余地があるから、正しい方法で自然葬をしようね。
不作為による遺棄
死体の場所的移転を伴わない場合でも、死体遺棄罪が成立することがあります。
法令、慣習、契約等によって、当該死体について葬祭の義務を有する者が、葬祭の意思なく死体を放置してその場所から立ち去る場合には、不真正不作為犯として本罪が成立します。(大判T6.11.24)。

どんな場合があるウホ?

例えば、同居の親が亡くなったにも関わらず「火葬するお金がないから」とか「どうしたら良いか分からなかった」といった理由で、何日(何年)も遺体をそのままにしているような場合が挙げられるね。

ただし、死体の葬祭義務がなければ、自分が殺害した死体を放置してその場を立ち去ったとしても不真正不作為犯にはならないよ。
領得
ここでいう領得とは「所持を取得すること」とされています(大判T13.10.7)。
取得する場合は、直接であると間接であるとを問いません。
また、窃取、詐取、買受けなど、方法の如何を問いません。
罪数
死体損壊、遺棄、領得が連続して行われた場合は、本条の包括的ー罪となります。
しかし、一度埋没遺棄した死体を数か月後に発掘して損壊した場合には、死体遺棄罪と死体損壊罪がそれぞれ成立し、併合罪となります(最判S27.6.24)。
他罪との関係
殺人罪との関係
殺人罪と刑法第190条の罪は併合罪の関係になります(大判S8.7.8)。

殺人罪と死体遺棄罪で考えると、不可罰的事後行為なんじゃないかと思うけど違うウホ?

では訊くけど、殺人罪と刑法第190条の罪の保護法益は何か分かるかな?

殺人罪の保護法益は「人の生命」、刑法第190条の罪の保護法益は「社会的秩序・風俗としての一般的宗教感情・習俗及び宗教的平穏」ウホ。

そうだね。

それぞれの罪の保護法益が違うから、同一の機会に為されたとしても別個の犯罪として成立すると考えられているよ。
放火罪との関係
放火によって死体を損壊した場合は放火罪と本罪が成立し、観念的競合となります(大判T12.8.21)。
参考文献

