「準強制わいせつ罪」「準強制性交等罪」の条文
準強制わいせつ罪と準強制性交等罪は、刑法第178条で規定されています。

暴行・脅迫を用いないという点が、強制わいせつ罪や強制性交等罪との一番の違いウホね。

第1項が準強制わいせつ罪、第2項が準強制性交等罪に関する規定になっているよ。
犯罪の主体
第1項の罪(準強制わいせつ罪)であっても、第2項の罪(準強制性交等罪)であっても、男女ともに本罪の主体となります。
犯罪の客体
男女のいずれもが本罪の客体となります。
行為
本条の罪では、暴行・脅迫を用いず、人が心神喪失若しくは抗拒不能の状態にあるのを利用し、又は心神を喪失させ若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為又は性交等をすることで成立します。
心神喪失
心神喪失とは、精神機能の障害によって正常な判断能力を失っている状態をいいます。
例えば、熟睡、泥酔、高度の精神病・精神薄弱などが挙げられます。
抗拒不能
抗拒不能とは、心神喪失以外の理由で心理的又は物理的に抵抗が不可能となっている状態、若しくは著しく困難な状態のことをいいます(名古屋高判S28.10.7)。
社会一般の常識に照らし、当該具体的事情の下で身体的又は心理的に反抗の不能又は著しく困難と認められる状態をいい、暴行又は脅迫による場合を除き、その発生
原因を問いません(東京高判S56.1.27)。
・睡気、周囲の暗さ等によって犯人を自己の夫又は情夫と誤信した場合(仙台高判S32.4.18、広島高判S33.12.24)
・患者が医師を信頼し、治療に必要な施術をするものと誤信した場合(大判T15.6.25、東京高判S33.10.31)
・祈祷に必要な行為をするものと信じさせた場合(広島地三次支判S40.1.7)
・催眠術を利用した場合(東京高判S51.8.16)
心神喪失又は抗拒不能にさせる手段・方法
特に制限がないため、どのような方法でも構いません。
わいせつな行為
刑法で規定されている罪における「わいせつ」とは、いたずらに性欲を興奮又は刺激させ、かつ、普通人の正常な羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するものをいいます。
「わいせつ」の定義については、『刑法第176条:強制わいせつ罪』にて詳しく説明しています。
犯意
心神喪失又は抗拒不能に乗じた場合には、相手方がその状態にあることの認識が必要とされています。
なお、「乗じる」とは「既存の状態を利用すること」をいいます。
未遂犯処罰規定の有無
改正後の刑法第180条において「第百七十六条から前条までの罪の未遂は、罰する。」と規定されているとおり、本罪の未遂は処罰されます。
加重処罰規定の有無
本罪の結果的加重犯として「準強制わいせつ致死傷罪」「準強制性交等致死傷罪」が規定されています。
『刑法第181条:強制わいせつ等致死傷罪』のページで詳しく解説しています。
刑法第178条の非親告罪化
本条の罪についても、強制わいせつ罪や強制性交等罪と同様に2017年7月の刑法改正以後は非親告罪となっています。
そのため、改正法の施行時に既に法律上告訴がされることがなくなっているものを除き、改正前に行われた準強制わいせつ罪等についても非親告罪として取扱うこととなりました。
参考文献
関係法令
刑法第176条:強制わいせつ罪

刑法第177条:強制性交等罪
刑法第179条:監護者わいせつ罪、監護者性交等罪

刑法第181条:強制わいせつ致死傷罪、強制性交等致死傷罪など
刑法第241条:強盗・強制性交等罪及び同致死罪


