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強制性交等罪:平成29年に改正された刑法第177条を解説

刑法:各論
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ゴリップル
ゴリップル

恐ろしい世の中ウホ!

ハルコ博士
ハルコ博士

どうしたの?

2018年5月15日の、このニュースウホ!

福岡県警田川署は15日、商業施設でトイレに連れ込んだ男児(3)の尿を飲んだとして、強制性交の疑いで同県大任町今任原、無職の男(31)を逮捕した。
逮捕容疑は4日午後2時5分ごろ、同県田川市のディスカウントストアで面識のない男児に声を掛け、男子トイレの個室でわいせつな行為をした疑い。

小さい男の子を持つ親としては、他人事じゃないウホね…

今回は”強制性交等罪”という刑法第177条が適用されているけど、以前までは”強制わいせつ罪”(刑法第176条)が適用されていた事案だね。

今日は、平成29年の刑法改正で強姦罪から改められた強制性交等罪について説明するよ。

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「強制性交等罪」の条文

強制性交等罪は、刑法第177条で規定されています。

刑法第177条
十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、こう門性交又は口くう性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。
十三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。

被害者の年齢によって犯行態様が違うのは、強制わいせつ罪と同じウホね。

そう、13歳以上の男女に対する行為については「暴行又は脅迫」が必要で、13歳未満の男女に対する行為については「暴行又は脅迫」は不要というのは強制わいせつ罪と同じだね。

刑法第177条は、構成要件の変更だけでなく法定刑の下限の引き上げも行われているウホね。

そう! 改正前は「三年以上の有期懲役」となっていたけど、改正後は「五年以上の有期懲役」になっているよ!

「わいせつ」の意義

刑法で規定されている罪における「わいせつ」とは、いたずらに性欲を興奮又は刺激させ、かつ、普通人の正常な羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するものをいいます。

「わいせつ」の定義については、『刑法第176条:強制わいせつ罪』にて詳しく説明しています。

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犯罪の主体

男性であっても、女性であっても本罪の主体となります。

改正前の刑法第177条(強姦罪)においては、原則として男性のみが主体となっており、女性が主体となるのは男性との共同正犯の場合(最決S40.3.30)、責任能力を欠く男性を利用した間接正犯の場合のように限られていました。

犯罪の客体

改正前の刑法第177条では女性のみが本罪の客体となっていましたが、改正後は男女のいずれもが本罪の客体として取り扱われることとなりました。

刑法第177条前段が規定する客体

13歳以上の男女です。

この場合、性交等をするだけでは足りず、暴行又は脅迫を用いて性交等が行われなければなりません。

なお、前段の行為の場合は「被害者が13歳以上であることの認識」は不要であるとされています。

刑法第177条後段が規定する客体

13歳未満の男女です。

この場合は、性交等をするだけで強制性交等罪が成立し、暴行又は脅迫は必要ありません。

また、刑法改正前の強姦罪につき「被害者が3 歳の幼女であっても不能犯とはならない」(福岡地飯塚支判S34.2.17)という判例もあります。

暴行又は脅迫

暴行又は脅迫の程度

判例によると「暴行、脅迫は、必ずしも相手方の反抗を抑圧する程度のものであることを要せず、犯行を著しく困難ならしめる程度のもので足りる(最判S24.5.10)」とされています。

”程度”の判断は、被害者の年齢、精神状態、犯行態様等の諸般の事情を考慮して、具体的状況のもとで社会通念に従って判断されることとなります。

ですので、一概に「〇〇だから反抗を著しく困難ならしめる程度に達している」という基準があるわけではありません。

強制性交等罪における暴行は「最狭義の暴行」に分類されます。

刑法における”暴行”の定義については、暴行罪のページで解説しています。

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暴行又は脅迫の時間的接着性

改正前の刑法第177条に関する判例では、暴行又は脅迫行為と姦淫行為との間に時間的間隔があったとしても、暴行又は脅迫によって姦淫が行われたと認められる限り、本罪は成立するとしています。

なお、東京高判S29.12.21では40分、高松高判S47.9.29では2週間もの時間的間隔を認めています。

自らが先に行った暴行・脅迫の結果を利用して性交等をする場合

強制性交等罪が成立します。

自ら暴行・脅迫を行わなくとも共謀者の加えた暴行・脅迫を利用して性交等をする場合

強制性交等罪の共同正犯が成立します。

共謀関係にない第三者が加えた暴行・脅迫を利用して強制性交等をする場合

強制性交等罪は成立しませんが、準強制性交等罪は成立する余地があります。

参考判例(東京高判S36.9.18)
他の第三者が強姦又はその他の犯罪の手段として加えた暴行・脅迫の行為を単に利用して、他人の犯罪の実行に際し、又はその終了後において姦淫を遂げるような場合には、刑法第178条即ち女子の抗拒不能に乗じ姦淫した罪に該当する場合は格別、第177条前段の強姦罪は構成しない。

いわゆる承継的共同正犯の場合で、先行者の加えた暴行・脅迫を利用して性交等をする場合

強制性交等罪が成立します。

承継的共同正犯とは、ある犯罪について、先行行為者が実行行為に着手し、いまだ当該行為の全部を終了しない段階で、後行行為者との間にその犯罪についての共同実行の意思を生じ、その後、先行行為者と後行行為者とが共同してその後の実行を行う場合をいいます。

暴行又は脅迫と性交等の因果関係

本条前段の姦淫は、暴行・脅迫を手段としてなされなければなりません。

従って、暴行又は脅迫が存在したとしても、それによって性交等に及んだのではなく、被害者の同情心、あるいは真意に出た承諾に基づいて性交等が行われたような場合には、強制性交等罪の既遂とはなりません(未遂罪については成立の余地があります)。

強制性交等罪における行為

改正前の刑法第177条(強姦罪)では姦淫行為のみを対象としていましたが、改正後は「肛門性交」「口腔性交」についても本条で処罰されることとなりました。

行為の形態

性交

性交とは、膣内に陰茎を入れる行為のことで、改正前は”姦淫”として扱われていた行為のことです。

膣内(肛門内、口腔内)に異物を入れる行為は刑法第176条の強制わいせつ罪が適用されます。

肛門性交

肛門性交とは、肛門内に陰茎を入れる行為のことです。

改正前の刑法では”強制わいせつ罪”だったウホ!

口腔性交

口腔性交とは、口腔内に陰茎を入れる行為のことです。

これも改正前の刑法では”強制わいせつ罪”だったウホ!

行為の態様

行為の態様は、大きく分けて二つのパターンに分けることができます。

被害者の膣内、肛門内若しくは口腔内に、自己又は第三者の陰茎を入れる行為

「被害者の膣内等に自分の陰茎を入れる行為」というのは何となく想像できるウホ。

でも「被害者の膣内等に第三者の陰茎を入れる行為」って何だかイメージが湧かないウホ。

「犯人が責任能力のない男性を間接正犯として利用して、被害者と強制的に性交等をさせた場合」は「被害者の膣内等に第三者の陰茎を入れる行為」と言えるだろうね。

自己又は第三者の膣内、肛門内若しくは口腔内に、被害者の陰茎を入れさせる行為

「入れる」んじゃなくて「入れさせる」のも犯罪になるウホ?

例えば、「男性被疑者が男性被害者に暴行を加えて、自分の肛門に被害者の陰茎を入れさせる場合」や「女性被疑者が男性被害者を脅迫して、被害者の陰茎を第三者の口腔内に挿入させた場合」等が挙げられるよ。

うーん… 何だか複雑ウホね…。

犯意

前段の被害者(13歳以上の男女)に対する犯意

暴行又は脅迫が、性交等の手段とする意思で行われなければなりません。

この時、被害者の年齢が13歳以上であることの認識は必要ありません。

後段の被害者(13歳未満の男女)に対する犯意

判例(大判T14.4.23)では、13歳未満の者であることの認識が必要であるとされています。

着手時期

前段の被害者(13歳以上の男女)に対する強制性交等

「犯意をもって、その手段である暴行又は脅迫を開始したとき」が強制性交等罪の着手になります。

判例(最判昭28. 3 .13)によれば、姦淫(性交)を開始しなくても実行の着手が認められるとされています。

なお、強制性交等罪における暴行・脅迫は、同じく性犯罪である強制わいせつ罪(刑法第176条)における暴行・脅迫よりも重い程度が必要であると判断される場合が多いです。

後段の被害者(13歳未満の男女)に対する強制性交等

「犯意をもって、性交等を開始したとき」が強制性交等罪の着手になります。

既遂時期

改正前の刑法第177条(強姦罪)に関する判例では、膣内に陰茎の一部が没入した時点で既遂に達し(仙台高判S30.5.3)、必ずしも射精を必要としない(大判T2.11.19)とされています。

この考えに則れば、強制性交等罪の既遂時期は膣内、肛門内、口腔内に陰茎の一部が没入した時点であり、必ずしも射精を必要としないと考えることができます。

また、性器の接触だけでは強制性交等罪は成立しませんので、膣内等に一部の没入もない場合や、陰茎を単に舌先で舐める行為(舐めさせる行為)は性交等には当たらず、本条の未遂罪や強制わいせつ罪の成否を検討することになります。

未遂犯処罰規定の有無

改正後の刑法第180条において「第百七十六条から前条までの罪の未遂は、罰する。」と規定されているとおり、本罪の未遂は処罰されます。

加重処罰規定の有無

本罪の結果的加重犯として「強制性交等致死傷罪」が規定されています。

刑法第181条:強制わいせつ等致死傷罪』のページで詳しく解説しています。

https://goriharu.com/2018/05/26/k181/

刑法第177条の非親告罪化

従来、強姦罪等の性犯罪については、被害者の名誉、プライバシーの保護を目的として親告罪(被害者等からの告訴がなければ公訴を提起できない罪)とされていました。

しかし、告訴の選択権を被害者に委ねることにより、被告人からの報復を恐れるなど、かえって大きな精神的負担を生じさせている状況が認められたため、2017年7月の刑法改正によって性犯罪は非親告罪となっています。

よって、改正法の施行時に既に法律上告訴がされることがなくなっているものを除き、改正前に行われた強姦罪等についても非親告罪として取扱うこととされました。

集団強姦罪の廃止

改正前の刑法第178条の2で集団強姦罪、改正前の刑法第181条第3項では集団強姦致死傷罪が規定されていましたが、今回の刑法改正で廃止されました。

どうしてなくなったウホ?

集団強姦罪等は、集団的形態による強姦の悪質性・ 重大性に鑑みて強姦罪・準強姦罪の加重類型として設けられていたんだ。

でも、今回の刑法改正で強制性交等罪(強姦罪)、強制性交等致死傷罪(強姦致死傷罪)の法定刑の下限が引き上げられたよね。

これによって、強制性交等罪や強制性交等致死傷罪の法定刑の範囲内で犯情などを十分に考慮して適切な量刑を行うことができると考えられたため、集団強姦罪及び集団強姦致死傷罪については、廃止されたんだ。

性犯罪の法定刑の下限が上がったのは、性犯罪に対する国民の厳しい処罰感情があったからウホ?

だったら、強制性交等罪の法定刑の下限が引き上げられたという理由で廃止しなくても、集団強姦罪とかも法定刑の下限を引き上げて存続させれば良かったのに… と思ってしまうウホねぇ。

罪数

前段と後段の関係

前段と後段の罪が同一機会に行われた場合は、本罪一罪が成立します。

他の性交等罪との関係

犯行の時間的・場所的接着性等の犯行の態様によって、包括一罪と認められる場合と、併合罪と認めるべき場合とがあります。

強制わいせつ罪との関係

同一の機会に行われた場合は、強制わいせつ罪は強制性交等罪に吸収され、強制性交等罪の一罪のみが成立します。

刑法第177条に関する諸問題

一定の身分関係がある場合の本罪の成否

夫婦間の場合

本罪は、継続的な性関係を前提とし、相互に相手の要求に応じて性交する義務があるとされる夫婦聞においても成立する場合があります。

改正前の刑法第177条(強姦罪)につき、判例は、虐待する夫から実家に逃げ帰っていた妻をその夫が強引に連れ帰る途中、友人と共謀の上、自動車内でそれぞれ同女を強いて姦淫したという事例について、強姦罪の成立を肯定しています(広島高松江支判S62.6.18)。

親子間の場合

父親が実子を強姦した場合についても、本罪が成立するとした判例があります(東京地判S36.3.30)。

子どもが18歳未満の場合は『刑法第179条第2項:監護者強制わいせつ罪』の成立も検討した方が良いでしょう。

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被害者の承諾

被害者の真意に出た承諾がある場合には、本罪は成立しません。

しかし、13歳未満の者については、承諾があっても本罪は成立するとされています。

承諾の主体

”承諾”することが出来るのは行為者本人に限られています。

親権者等の承諾があったとしても、行為者本人の承諾がなければ本罪は成立します。

承諾の時期

承諾の有無が問題となるのは13歳以上の者に対して(前段の場合)です。

そのため、承諾は犯行の着手前(暴行・脅迫の開始時)には存在していなければならないとされています。

被害者を騙して承諾を得た場合

錯誤に基づく承諾(被害者を騙して得た承諾)は、当然無効となります。

通常、このような場合は暴行・脅迫を伴わないため強制性交等罪は成立しないと考えられています。

しかし、刑法第178条の準強制性交等罪については成立の余地があるといえるでしょう。

参考文献

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関係法令

刑法第176条:強制わいせつ罪

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この記事を書いた人
ゴリップル

不労所得での生活を夢見るオスゴリラ。マッサージと節約が大好き。サビ残は大嫌い。職場で『ふるさと納税』『iDeCo』『つみたてNISA』の普及活動を推進。仮想通貨投資では10年先を見据えてXRP(リップル)に投資中。詳しいプロフィールはこちら

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