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強制わいせつ致死傷罪・強制性交等致死傷罪など:刑法第181条を解説

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刑法:各論
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刑法第181条の条文

刑法第181条では、第1項で強制わいせつ致傷罪、第2項で強制性交等致傷罪について規定しています。

刑法第181条
第1項
 第百七十六条、第百七十八条第一項若しくは第百七十九条第一項の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し、よって人を死傷させた者は、無期又は三年以上の懲役に処する。

第2項 第百七十七条、第百七十八条第二項若しくは第百七十九条第二項の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し、よって人を死傷させた者は、無期又は六年以上の懲役に処する。

つまり、どういうことだってばよ?

(頭がこんがらがって口癖まで忘れてる!)

つまり、第1項では強制わいせつ罪(176条)、準強制わいせつ罪(178条1項)及び監護者わいせつ罪(179条1項)の結果的加重犯についてそれぞれ定めているんだ。

第2項では強制性交等罪(177条)、準強制性交等罪(178条2項)及び監護者性交等罪(179条2項)の結果的加重犯について定めているってことだよ。

本条の罪の基本犯罪については、以下のページで説明しているよ。

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刑法第178条:準強制わいせつ罪、準強制性交等罪

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刑法第179条:監護者わいせつ罪、監護者性交等罪

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基本犯罪が未遂だった場合について

本条の罪の成否に関しては、上記の基本犯罪が既遂か未遂かは問いません(最判S23.11.16)。

つまり、基本犯罪が既遂であろうと未遂であろうと、刑法第176条~同法第180条に規定された行為によって人の死傷という結果が生じた場合は、刑法第181条に規定されている罪が成立するということです。

また、未遂の形態が中止未遂であっても障害未遂であっても本罪の成否には直接の影響がなく、情状として考慮されるか否かの問題にとどまります(最判S24. 7.9)。

未遂犯については『時間的経過から考える犯罪の形態。未遂犯と不能犯について解説!』で説明しています。

時間的経過から考える犯罪の形態。未遂犯と不能犯について解説!
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犯罪の主体

本罪の主体となるのは、刑法第176条~同法第180条が規定する犯罪の犯人です。

犯罪の客体

生存している人が本罪の客体となり、既に死亡している人については本罪の客体とはなりません。

行為

刑法第176条~同法第180条に規定された犯罪の犯人が被害者を死傷させることであり、いわゆる結果的加重犯(大判M44.4.28)となります。

本罪が成立するためには、基本犯罪を犯したことと死傷の結果との間に因果関係が必要となります。

性交等の準備段階や性交等後の段階における受傷で因果関係を認めた判例

・姦淫前に被害者の乳房にキスマークをつけた場合(東京高判S46.2.2)

・強姦した際に被害者が救いを求めて叫んだので、これを抑圧するために顔面を殴打して傷害を負わせた場合(東京高判S30.6.1)

被害者が逃走しようとした際の受傷で因果関係を認めた判例

・被害者が逃げようとした際に足を挫いた場合(名古屋高金沢支判S28.3.19)

・逃げるために二階から飛び降りた被害者が負傷した場合(最決S35.2.12)

・被害者が逃走中に崖から転落して死亡した場合(東京高判S42.3.7)

暴行や性的行為の際の受傷について因果関係を認めた判例

・暴行の際、地上にあった杭で負傷した場合(大判T4.9.11)

・脅迫に使用されたナイフを被害者が遠くに投げ捨てた際に負傷した場合(東京高判S37.4.25)

死傷の結果

死傷の結果は、わいせつ行為や性交等の行為そのもので生じたものはもちろん、わいせつ行為や性交等の手段として行われた暴行・脅迫から生じたものでもよいとされています(最決S43.9.17)。

また、強制わいせつ罪・準強制わいせつ罪・強制性交等罪・準強制性交等罪に付随する行為から発生した死傷でもよいとされています(大判M44.6.29)。

本罪における傷害の意義

大半の判例は、本罪の”傷害”について、刑法第204条の傷害と同義に解釈すべきであるとしています(最決S38.6.25)。

一方で「強姦罪における暴行は”抵抗を著しく困難ならしめる程度のもの”であるから、軽度の傷害を生じることは当然に予定されており、軽微な傷害は本罪にいう”傷害”には当たらない」とした判例もあります(大阪高判S38.7.3)。

”軽微な傷害”をめぐる主な判例

同程度の傷害であっても、本罪における傷害と認定されるものと認定されないものがあり、一概に線引きをすることは難しいです。

ここでも諸般の事情を考慮し、具体的状況のもとで社会通念に従って判断されると考えるのが妥当です。

本罪における傷害にあたると認定されたもの

・陰部付近に軽度の炎症を生じさせた場合(高松高判S29.1.12)

・全治二日間の皮膚剥離の場合(名古屋高判S32.1.30)

・被害者の乳房の上部にキスマークをつけた場合(東京地判S45.10.22)

本罪における傷害にあたらないとされたもの

・全治三日間を要する腔外陰部擦過傷を与えた場合(大阪地判S41.2.11)

・加療約一週間を要する外陰部裂傷を負わせた場合(大阪地判S42.12.16)

・麻酔剤を注射して心神喪失状態に陥らせた場合(奈良地判S46.2.4)

処女膜裂傷

処女膜裂傷が本条にいう傷害に当たるか否かについて、判例は一貫して「傷害に当たる」との判断を示しています(最判S24.7.12、最判S25.3.15など)。

犯意

本罪は結果的加重犯ですから、死傷の結果についての故意や過失は必要ありません。

犯人に傷害の故意があった場合

犯人に傷害の故意があった場合について、判例(大判T15.5.14)では「傷害が強姦という犯罪行為の遂行の過程で生じたと認められる限り、本罪ー罪が成立する。しかしながら、強姦とは別個に行われた暴行によって生じたと認められる場合は、傷害罪が別に成立する」としています。

犯人に殺人の故意があった場合

犯人が殺意を有していた場合(殺人の故意があった場合)には、「(準)強制わいせつ致死罪」「(準)強制性交等致死罪」「監護者わいせつ致死罪」「監護者性交等致死罪」のほかに殺人罪も成立し、両罪は観念的競合の関係になります。

法定刑の下限の引き上げ

改正前の強姦致死傷罪では法定刑の下限が5年でしたが、改正後の強制性交等致死傷罪では下限が6年に引き上げられています。

参考文献

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この記事を書いた人
ゴリップル

不労所得での生活を夢見るオスゴリラ。マッサージと節約が大好き。サビ残は大嫌い。職場で『ふるさと納税』『iDeCo』『つみたてNISA』の普及活動を推進。仮想通貨投資では10年先を見据えてXRP(リップル)に投資中。詳しいプロフィールはこちら

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