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強制わいせつ罪:「無理やりキス」が許されるのは漫画だけ?刑法第176条を解説

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刑法:各論

ジャンプっ子なら「無理やりキスする」と聞いて思い浮かぶのは、これ以外ないウホね。

「メンバー」もこんな感じだったウホ?

ハルコ博士
ハルコ博士

あぁ、J事務所のYさんの件ね。

何で容疑者じゃないウホ?

昨年児ポ法違反で書類送検された漫画家は「容疑者」扱いだったのに、おかしいウホ。

余計反感買うって思わないウホ?

うーん。

今回の件は示談が成立しているという話だから、そういう意味で”忖度”しているのかもしれないね。

名前や事務所名を出さないってことは、ハルコ博士も”忖度”してるウホ?

ノーコメント。

じゃあ、今日は強制わいせつ罪について解説しようか。

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「強制わいせつ罪」の条文

強制わいせつ罪は、刑法第176条で規定されています。

刑法第176条
十三歳以上の男女に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上十年以下の懲役に処する。
十三歳未満の男女に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。

被害者の年齢によって犯行態様が違うウホね。

そうね。

13歳以上の男女に対する行為については「暴行又は脅迫」が必要だけど、13歳未満の男女に対する行為については「暴行又は脅迫」は不要なんだよ。

「わいせつ」の意義

刑法で規定されている罪における「わいせつ」とは、いたずらに性欲を興奮又は刺激させ、かつ、普通人の正常な羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するものをいいます。

昭和36年5月2日の名古屋高等裁判所金沢支部の判決によれば、「わいせつな行為」について「徒(いたずら)に性欲を興奮又は刺激せしめ、かつ、普通人の正常な性的差恥心を害し、善良な性的道徳観念に反する行為」と定義しており、この定義が今日まで用いられています。

「わいせつ行為」に該当するとされた行為

女性の陰部や乳房への接触、接吻することはもちろん「わいせつ行為」に該当するとされていますが、その他にも「少年の肛門に異物を挿入する行為(東京高判S59 6.13)」、「裸にして写真を撮る行為(東京地判S62.9.16)」などが「わいせつ行為」に該当すると判示されています。

なお、釧路地北見支判S53.10.6において「男女に強いて性交させる行為」も強制わいせつ罪における「わいせつ行為」にあたると判示されていますが、2017年(平成29年)7月13日に施行された改正刑法では「男女に強いて性交させる行為」については刑法第177条の強制性交等罪の態様として規定されています。

犯罪の主体

特に制限はなく、男女のどちらであっても「強制わいせつ罪」の主体になります。

犯罪の客体

刑法第176条前段が規定する客体

13歳以上の男女です。

この場合、わいせつ行為をするだけでは足りず、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為が行われなければなりません。

なお、前段の行為の場合は「被害者が13歳以上であることの認識」は不要であるとされています。

刑法第176条後段が規定する客体

13歳未満の男女です。

この場合は、わいせつ行為をするだけで強制わいせつ罪が成立し、暴行又は脅迫は必要ありません。

しかし、後段の罪が成立するためには「被害者が13歳未満であることの認識」が必要であるとされています(最決昭44.7.25)。

暴行又は脅迫の程度

判例によると「暴行又は脅迫は、必ずしも相手方の反抗を抑圧する程度のものであることを要しない(大判T13.10.22)」とされています。

強制わいせつ罪における暴行は「最狭義の暴行」に分類されますが、強盗罪のように「反抗を抑圧するに足りる」程度までは必要とされていません。

刑法における”暴行”の定義については、暴行罪のページを確認してください。

暴行罪:殴っていないのに罪に問われる?刑法第208条を解説
...

強制わいせつ罪にいう”暴行”は、「婦女の意思に反して指を陰部に挿入する場合」というように、暴行それ自体がわいせつな行為であっても構いません。

強制わいせつ罪における”暴行”にあたるとされた行為

強制わいせつ罪における”暴行”にあたるとされた行為については、「抱擁する行為(大判T13.10.22)」、「不意に股間に手を挿入する行為(大判S8.9.11)」、「指を陰部に挿入する行為(大判T14.12.10)」、「婦女の意思に反して強いて接吻する行為(名古屋高金沢支判S36.5.2)」などの判例があります。

「性的意図」の有無

従来、強制わいせつ罪が成立するためには「性欲を刺激・興奮・満足させる目的」が必要とされていました。

どういうことウホ?

これを説明するために、「専(もっぱ)ら報復または侮辱虐待の目的をもって婦女を脅迫し、裸にして撮影した行為(最判S45.1.29)」に関する判例を確認しておくよ。

強制わいせつ罪が成立するためには、その行為が犯人の性欲を刺激興奮させ、または満足させるという性的意図のもとに行なわれることを要し、婦女を脅迫し裸にして、その立っているところを撮影する行為であっても、これが専らその婦女に報復し、または、これを侮辱し、虐待する目的に出たときは、強要罪その他の罪を構成するのは格別、強制わいせつの罪は成立しない。

つまり、この最高裁判決では「婦女を裸にして撮影する行為であっても、わいせつな目的がなく、単に報復等の目的しかなければ強制わいせつ罪は成立しない」と判示しているんだ。

目的が何であれ、被害者が性的な嫌がらせを受けているのは変わりないウホ。

こんなのおかしいウホ!

昭和45年1月29日の最高裁判決以来、「性欲を刺激・興奮・満足させる目的(性的意図)の有無」という判断基準が示されていましたが、40年以上が経過した平成28年3月29日、神戸地方裁判所で次のような判決が出ました。

強制わいせつ罪の保護法益は被害者の性的自由であり、犯人が性的意図を持っているか否かは、本罪の成立に影響がなく、また、性的意図を必要とするという法規定も存在しない。
客観的にわいせつ行為がなされ、犯人がそのような行為をしていることを認識している以上は、強制わいせつ罪が成立するとするのが相当である。

おぉ~っ!

犯人側に「わいせつの目的」があろうがなかろうが、保護されるべきは被害者の性的自由なので、客観的にわいせつと判断される行為が為され、犯人自身もそのような行為をしていることを認識していれば、強制わいせつ罪が成立すると判示したんだ。

でも、地裁の判決は高裁や最高裁でひっくり返されるかもしれないウホ?

平成29年11月29日の最高裁判決では、次のように判示されているよ。

個別具体的な事情の一つとして、行為者の目的等の主観的事情を判断要素として考慮すべき場合があり得ることは否定し難い。
しかし、そのような場合があるとしても、故意以外の行為者の性的意図を一律に強制わいせつ罪の成立要件とすることは相当でなく、昭和45年判例の解釈は変更されるべきである。

つまり、昭和45年の判例で示された”性的意図”については絶対に必要な条件ではなく、”性的意図”がなくても強制わいせつ罪は成立するとして判例の変更が為されたんだ。

これまでは”性的意図”があることが絶対要件だったけど、今後は個別事案に応じた具体的事実関係に基づいて”性的意図”が必要かどうかを判断していくということウホね!

着手時期

前段の被害者(13歳以上の男女)に対する強制わいせつ

「犯意をもって、その手段である暴行又は脅迫を開始したとき」が強制わいせつ罪の着手になります。

判例(最判昭28. 3 .13)によれば、わいせつ行為を開始しなくても実行の着手が認められるとされています。

なお、強制わいせつ罪における暴行・脅迫は、同じく性犯罪である強制性交等罪(刑法第177条)における暴行・脅迫よりも程度が軽度で足りる場合が多いです。

また、手段としての暴行が、同時にわいせつ行為に当たる場合もあるので、「着手があったか否か」の判断は慎重に行わなければいけません。

後段の被害者(13歳未満の男女)に対する強制わいせつ

「犯意をもって、わいせつ行為を開始したとき」が強制わいせつ罪の着手になります。

未遂犯処罰規定の有無

改正後の刑法第180条において「第百七十六条から前条までの罪の未遂は、罰する。」と規定されているとおり、本罪の未遂は処罰されます。

強制わいせつ罪の非親告罪化

従来、強制わいせつ罪等の性犯罪については、被害者の名誉、プライバシーの保護を目的として親告罪(被害者等からの告訴がなければ公訴を提起できない罪)とされていました。

しかし、告訴の選択権を被害者に委ねることにより、被告人からの報復を恐れるなど、かえって大きな精神的負担を生じさせている状況が認められたため、2017年7月の刑法改正によって性犯罪は非親告罪となっています。

まとめ

Y「メンバー」は、共演者だった女子高生に対して無理やりキスしたことで、強制わいせつ事件として書類送検されたウホね。

いくら人気グループに所属するアイドルといっても、46歳のオッサンが30歳近く年の離れた女性から相手にされると思う方がどうかしてるウホ。

相手が自分に好意を抱いていれば、無理やりのキスから少女漫画的展開になるかもしれないけど、世の中はそんなに甘くないウホ。

非モテのオッサンが生まれて初めてチヤホヤされて「この子は自分のことを好きなんじゃないか」と勘違いしてキスしたら、相手から「そんなつもりじゃなかった」と言われて訴えられてしまうのなら話はわかるウホ。

でも、J事務所のTというグループのアイドルで、これまでの人生で十分にモテてきたであろう人ですら「自分に好意があるかどうか」を見極められずに犯罪に手を染めてしまうなんて、オトコというのは本当に罪深い生き物ウホ。

(めっちゃよく喋るな!

イケメンに対する僻みが半端ないゾ…。)

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この記事を書いた人
ゴリップル

不労所得での生活を夢見るオスゴリラ。マッサージと節約が大好き。サビ残は大嫌い。職場で『ふるさと納税』『iDeCo』『つみたてNISA』の普及活動を推進。仮想通貨投資では10年先を見据えてXRP(リップル)に投資中。詳しいプロフィールはこちら

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