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責任能力がないとどうなるの?責任能力について解説

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刑法:総論
ゴリップル
ゴリップル
また犯人の精神鑑定をするウホ?
ハルコ
ハルコ博士
どうしたの?

ニュースで、この前捕まった連続殺人犯が精神鑑定されると言っていたウホ。

精神鑑定って何のためにするウホ?

一番の目的は”責任能力”があるかどうかを確かめるためだよ。
責任能力があるのとないのでは、どう違うウホ?
よし、今回は責任能力について解説しようか。
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意義

責任能力とは、有責に行為する能力のことです。

刑法の参考書などでは「自己の行為の是非を弁別し、この弁別に従って行動する能力」と説明されています。

簡単に言えば「自分がやっていることが良いことか悪いことかを判断する能力」ということです。

犯罪の成立要件の回で説明したように、犯罪が成立するためには「構成要件該当性」「有責性」「違法性」の3つの要件を満たさなければなりません。

そもそも”犯罪”とは何ぞや?犯罪の成立要件などを解説
...

責任能力というのは刑事責任の基礎となりますので、責任能力を持つ人にしか刑事責任(刑事的非難)を問うことができません。

責任能力がなければ、どうなるウホ?
「犯罪が成立しない」ということで、無罪になるよ。

責任能力が必要な時期

責任能力は、どの段階で必要なのでしょうか?

大量殺人をおこなった犯人が逮捕された後に、精神鑑定等に付されることがあります。

犯罪をおこなった後で精神的に不安定になったとしても、それだけで心神喪失や心神耗弱が認められるのでしょうか?

答えは「ノー」です。

「責任能力は、犯罪行為の時に存在することを必要とし、かつ、それで足りる」と言われています。

つまり、犯罪をおこなったときに責任能力があれば、その後の事情によって責任能力をなくしたとしても(たとえば、犯行の記憶をなくすために薬物を大量に服用し、その結果脳に障害が発生して記憶が戻らなかったとしても)、犯人に対して刑事責任能力を認めることができるのです。

じゃあ、精神鑑定を行う時だけサイコパスのふりをしても無駄ってことウホ?

そうだね。

犯行当時に責任能力があれば、その後に精神に不調を来たしても責任能力を認めることが出来るんだ。

責任能力が問題となる場合

刑事未成年者

14歳未満の人を刑事未成年者といい、常に刑事無責任能力者として責任能力が排除され、その行為は処罰されません。

刑法第41条
十四歳に満たない者の行為は、罰しない。

14歳未満の人であれば、是非弁別能力があったかどうかという心理学的要素に関係なく、無条件で刑事無責任能力者になります。

しかし、刑事責任を問うことはできませんが、触法少年には該当するので、少年法の規定に則って児童相談所に通告されることはあります。

14歳以上であれば、心神喪失や心神耗弱の理由がない限り刑事責任能力者となりますが、犯行時に18歳未満であれば、死刑や無期懲役の判決が下されないという特例があります(青少年犯罪者の改善・更生という見地から。少年法第51条)。

14歳未満は罪に問われないなら、何でもし放題ウホ?

「罪に問われない」というだけで、児童相談所への通告はされるし、行政的な処置はされることになるよ。

それに、民事上の責任などは保護者にもかかってくるんだから、変な気を起こしちゃいけないよ。

心神喪失者

心神喪失者は常に刑事無責任能力者となり、心神喪失者が犯した犯罪は処罰されません。

刑法第39条第1項
心神喪失者の行為は、罰しない。

心神喪失というのは、精神の障害によって物事の是非・善悪を判断する能力がない状態のこと、又は、是非・善悪を判断する能力に従って行動する能力がない状態のことをいいます。

心神耗弱者

心神耗弱者は、限定刑事責任能力者として扱われます。

つまり、責任能力が認められる範囲が限定されるため、刑事責任能力者が同じ行為をしたとしても、処断刑は刑事責任能力者のものよりも必ず軽いものになります(必要的減軽)。

刑法第39条第2項
心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。

心神耗弱というのは、精神の障害が物事の是非・善悪を判断する能力や、その判断に従って行動する能力が「ない」と判断されるほどではないけども、一般の人と比べると判断能力が著しく減退している状態のことをいいます。

責任能力の有無は誰が判断するのか

心神喪失や心神耗弱に当たるか否かの判断は、裁判所が行う法律判断になります(最決S58.9.13)。

ですので、医師などの鑑定による根拠が絶対に必要というわけではありません。

また、医師などの鑑定が行われ「心神喪失」や「心神耗弱」との診断が行われた場合であっても、裁判所はこの診断結果と異なる判断をすることも出来ます(最決S32.2.11)。

責任要素について

責任要素は、「故意(犯意)」と「過失」に分類することができます。

有責性というのは、「行為者の行動に対して非難することが可能であるかどうか」ですので、有責性を認めるためには、責任能力のほかに責任要素が必要となります。

故意

一定の犯罪事実を認識しながら、あえてその行動に出るという認容がある場合のことを故意といいます。

簡単に言えば、罪を犯す意思のことです。

故意については、下記で詳しく説明しています。

「わざと」じゃなければ犯罪じゃない?故意と過失について解説
...

過失

故意がないにもかかわらず、不注意によって構成要件的結果を実現するものを過失犯といいます。

刑法では、原則として故意に基づく犯罪を処罰の対象としており、過失犯は法律上の特別の定めがなければ処罰されません。

刑法第38条第1項
罪を犯す意思がない行為は、罰しない。ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない。

過失については、下記で詳しく説明しています。

「わざと」じゃなければ犯罪じゃない?故意と過失について解説
...

法の不知

最近では、動画を配信することで収入を得て生計を立てる人も増えてきました。

しかし、動画の再生数を稼ぐために、自分が働いているお店に迷惑をかけるような行動をしたり、他人に対して義務のないことを行わせたりと、過激なことを行う人もいます。

過激さを求めた結果、それが犯罪行為となり、自らの犯罪行為を全世界に公開することで警察に逮捕される人も出ていますが、彼らは自らの行動が犯罪になると知っていたのでしょうか?

犯罪になると知っていたならば「故意」に基づく行為として処罰されてしかるべきですが、犯罪になると思っていなかった場合にも「故意」が認められるのでしょうか?

このような「犯人が法律を知らなかった場合に、犯人の行為をどのように評価するか?」については、次のように定められています。

刑法第38条第3項
法律を知らなかったとしても、そのことによって、罪を犯す意思がなかったとすることはできない。ただし、情状により、その刑を減軽することができる。

簡単に言うと、「犯罪行為をしたならば”知らなかった”じゃ済まされないよ。」ということです。

しかし、ここで問題が生じます。

既に説明したように「故意」とは「一定の犯罪事実を認識しながら、あえてその行動に出るという認容がある場合のこと」です。

「法律を知らない」ということは、「犯罪事実を認識していない」というふうに捉えることもできます。

すなわち「法律を知っていれば正常な善悪の判断ができたかもしれない」「法律に違反すると知っていたならば犯罪行為をしないという選択をしていたかもしれない」ということです。

しかし、日本の刑法では法律を知らない場合にまで「故意」を認めています。

何故なら、一般的な判断能力を持つ国民ならば、法律に違反するか否かに関わらず、自分の行うことが善であるか(社会的に許されるものか)悪であるか(社会的に許されないものか)を判断することができますし、その判断の結果、悪であると判断されるような行為はするべきでないとされているからです。

コンビニエンスストアの店頭に並べられた”おでん”の具を指でつつく行為について、その行為がどんな犯罪になるか知らなかったとしても、倫理的・道徳的に良いことか悪いことかというのは分かると思います。

相手に謝罪を求める際に、必要もないのに土下座をさせたり、法外な金品を要求することについても同じです。

したがって、自分の意思でおこなった行為である以上は、「法律を知らなかったので故意ではなく、違法とはならない。」と主張したとしても、罪を逃れることはできません。

アイスクリームのストッカーで寝転ぶ行為も…?
もちろん、ダメ!

原因において自由な行為

先ほど、「責任能力は犯罪行為の時に存在することが必要である」と説明しました。

では、自らの意思で責任能力がない状態を作り出し、その状態に乗じて犯罪行為をおこなった場合には、責任能力が認められず犯罪が成立しないのでしょうか?

具体例を出します。

ここに、お酒を飲むと暴力的になり、これまでも度々暴行事件や傷害事件を起こしてきた酒癖の悪いAがいます。

Aはお酒を飲むと記憶をなくしてしまうので、自分がした事件については全く覚えていませんが、同僚などから何度も話を聞かされており、自分が酔っぱらうとどのようになってしまうかの認識はあります。

AにはBという同僚がいますが、AはBのことが嫌いで、常々殴ってやりたいと思っていますた。

ある時、Aは「お酒を飲んでしまえば記憶がなくなってしまうのだから、責任能力もなくなるということではないか?」と考え、Bを誘ってお酒を飲みに行きました。

そして、お酒に酔ったAはいつものとおり暴力的になり、嫌いなBを殴って怪我をさせてしまいましたが、当然この時の記憶はAにはありません。

この場合、Aには犯罪行為の時点で正常な思考ができない状態になっていますが、責任能力を認めることができるのでしょうか?

結論から言えば、Aの行為に責任能力を認めることができ、これを可能にするのが「原因において自由な行為」という考え方です。

Aはお酒を飲むと正常な判断能力がなくなってしまって記憶をなくしてしまいますが、お酒が入っていないときには正常な判断能力が備わっています。

つまり、お酒さえ飲まなければ正常な判断を有しており、アルコールを摂取しないで正常な判断能力を有する状態を維持するのか、それともアルコールを摂取して判断能力を失わせるのかということは、Aの自由意思に委ねられているわけです。

通常の状態では正常な判断能力を有しており、かつ、アルコールが入ることで自らが正常な判断能力を失うという自覚がありながら、あえてアルコールを摂取することで故意に心神喪失(心神耗弱)状態を作り出し、その状態を利用して犯罪を実現した前記事例のような場合には、たとえ行為時に心神喪失(心神耗弱)の状態であっても刑法第39条第1項は適用されません。

ゴリップルもお酒を飲んで記憶がなくなることはよくあるウホ。
「お酒を飲んでいたから記憶にない。」じゃ通用しないってことだよ。
お酒を飲んでいないときの「記憶にございません。」なら許されるウホ?
それとこれとは別問題!

まとめ

”責任能力”がとっても大事って、よく分かったウホ!

そう、どんなに証拠が揃っていても、”責任能力”がなければ犯人に刑罰を科すことは出来ないんだ。

だから、捜査機関は精神鑑定をおこなって責任能力の有無を調べているんだよ。

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この記事を書いた人
ゴリップル

不労所得での生活を夢見るオスゴリラ。マッサージと節約が大好き。サビ残は大嫌い。職場で『ふるさと納税』『iDeCo』『つみたてNISA』の普及活動を推進。仮想通貨投資では10年先を見据えてXRP(リップル)に投資中。詳しいプロフィールはこちら

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