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人に怪我させても罪に問われない?違法性阻却事由について解説

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刑法:総論

日本の刑法においては、人を殴って怪我をさせたような場合には刑法第204条の傷害罪に問われます。

しかし、人を殴って相手に怪我をさせた場合であっても、罪に問われない場合もあります。

それは、どのような場合でしょうか?

今回は、違法性阻却事由について解説します。

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違法性阻却事由の意義

構成要件に該当する行為は、原則として違法性が推定される行為です。

しかし、その違法性を排除し、行為を適正なものとする特別な事由を違法性阻却事由といいます。

刑法に明文の規定がある違法性阻却事由

職務行為(刑法第35条前段)

法令の規定上、公務員の職務とされている行為をいい、逮捕や勾留、捜索・差押えなどがこれに該当します。

例えば、刑法第220条で逮捕・監禁罪が規定されていますが、警察官等が法律に則って逮捕行為をおこなったとしても、逮捕罪は成立しません。

権利行為(刑法第35条前段)

法令の規定上、その者の権利とされている行為のことをいいます。

私人による現行犯逮捕や、親権者による懲戒行為がこれに該当します。

正当業務行為(刑法第35条後段)

法令上の根拠はないものの、社会生活上、正当と認められる業務として行う行為をいいます。

「業務」とは、社会生活上の地位に基づいて反復・継続して行われるものであればよく、必ずしも経済的な対価を追求する性質の職業に基づくものである必要はありません。

記者の取材活動、競馬等の公営ギャンブル、医師による治療行為、スポーツ行為などがこれに該当します。

例えば、人を刃物で切り付ける行為は、通常ですと傷害罪を構成しますが、外科医師が外科手術において患者の身体にメスを入れたとしても、正当業務行為ですから傷害罪は成立しません。

また、人を殴って相手を怪我させた場合についても、通常ならば傷害罪を構成するのですが、例えばボクシングの試合で対戦相手が負傷した場合等は、違法性が阻却されて傷害罪が成立しないこととなります。

正当防衛(刑法第36条第1項)

急迫・不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為をいいます。

急迫不正の侵害

「急迫」とは

法益の侵害が現に存在しているか、又は間近に差し迫っていることをいいます。

将来の侵害や、過去の侵害に対する正当防衛は認められません。

「不正」とは

「違法」と同義です。

相手の行為に有責性は必要ありませんので、刑事無責任者の行為に対しても正当防衛は成立します。

「侵害」とは

法益に対する実害、又はその危険を生じさせる行為のことをいいます。

防衛の意思

正当防衛が成立するためには「自己、又は他人の権利を防衛するためであること」が必要です。

侵害の機会を利用して、積極的に相手に害を加える意思(積極的加害意思)で侵害に臨んだ場合は、侵害の急迫性の要件を満たさない(最決S52.7.21)ので、正当防衛は成立しません。

防衛行為の相当性

急迫不正の侵害に対する防衛行為は、侵害に対する防衛手段として相当性を有していなければなりません。

刑法第37条(緊急避難)の場合と異なり、補充の原則(必ずしも、その防衛行為が唯一のものであること)や、法益権衡の原則(反撃によって生じた害が、侵害を防衛しないことによって生じる損害の程度を超えてはならないという制限)はありません。

突然指を掴んでねじり上げられ、痛さのあまり振りほどこうとして相手を突き飛ばしたところ、相手が倒れて後頭部に全治45日の傷害を負った事案につき、判例は、反撃行為により生じた結果がたまたま侵害された法益より大きかったとしても、その反撃行為が正当防衛行為でなくなるものではないとしています(最判S44.12.4)。

緊急避難(刑法第37条第1項)

自己、又は他人の生命、身体、自由、又は財産に対する現在の危難を避けるために、この危難の発生原因とは無関係な第三者の法益を、やむを得ず侵害する行為を緊急避難といいます。

自己、又は他人の生命、身体、自由、又は財産

「自己」とは

自衛官、警察官、消防職員、船長、医師、看護師等、一定の危難に自らの身をさらすべき義務を負う者は、その危難を他人に転嫁することは原則として許されません。

もっとも、これは、義務と衝突する限度で緊急避難の成立を否定する趣旨であるため、衝突しない場合には緊急避難が成立し得ますし、自己の法益のための緊急避難も絶対に不可能というわけではありません。

生命、身体、自由、又は財産

守られるべき法益には、生命、身体、自由、財産だけでなく、名誉や貞操も含まれます。

現在の危難

法益の侵害が現に存在しているか、又は間近に差し迫っていることをいい、将来の侵害や、過去の侵害に対する緊急避難は認められません。

「危難」は、人の行為によって生じる場合に限られず、自然現象、災害、動物、疾病等あらゆるものを含むと解されていて、人の行為については、適法であるか違法であるかを問いません。

行為者が、自己の有責行為によって自ら危難を招いた場合であって、社会通念に照らして、やむを得ないものとして避難行為を肯定することができないときは、緊急避難は成立しません。

やむを得ずにした

補充の原則

緊急避難が成立するためには、その防衛行為が、危難をさけるための唯一のものでなければなりません。

法益権衡の原則

反撃によって生じた害が、侵害を防衛しないことによって生じる損害の程度を超えてはならないという制限のことをいいます。

正当防衛では「不正」(侵害行為)対「正」(防衛行為)の関係となるため、侵害者の法益保護を考慮する必要性が低くなります。

これに対し、緊急避難は「正」(第三者の法益)対「正」(自己の法益)の関係となるため、小さな法益を守るために、より大きな法益を侵害することを認めるべきではないという趣旨から、この原則が認められています。

民事上の損害賠償責任

正当防衛の場合ですと、行為者は急迫・不正の侵害者に対して民事上の損害賠償責任を負いません。

しかし、緊急避難の場合には、避難行為によって第三者に発生した損害の賠償責任を負う場合があります。

社会通念上 違法性阻却事由として認められるもの

被害者の承諾に基づく行為

被害者の承諾とは、法益主体である被害者が自己の法益を放棄し、その侵害に同意・承諾することをいいます。

個人的法益に対する罪においては、真意に基づく被害者の承諾があることにより、構成要件該当性あるいは違法性が阻却されることが少なくありません。

しかし、違法性が阻却されるか否かは、単に承諾(同意)が存在するという事実だけでなく、行為者が被害者から承諾(同意)を得るに至った動機・目的、身体傷害の手段・方法、損傷の部位・程度など、諸般の事情に照らし合わせて決定されます(最決S55.11.13)。

例えば、被害者の承諾があったとしても、公序良俗に反するような「指詰め」などの行為は、社会的に相当な行為として違法性が阻却されることはなく、傷害罪を構成します。

推定的承諾に基づく行為

被害者の承諾はないものの、被害者が事情を知ったならば当然承諾したであろう場合に、その承諾を推定して行う行為のことをいいます。

例えば、無断で人の家に立ち入る行為は住居侵入罪(刑法第130条前段)を構成しますが、火災が発生して家の中に子供が取り残されているような場合に、子供を救出するために家主の承諾を得ないで人の家に無断で立ち入る行為は、推定的承諾に基づく行為として違法性が阻却されます。

自損行為

自己の法益を侵害する行為のことをいいます。

他人が所有する車を故意に傷付ければ器物損壊罪(刑法第261条)が成立しますが、自分が所有する車を故意に傷付けたとしても、犯罪を構成しません。

労働争議行為

労働者が、その主張を貫徹するために業務の正常な運営を阻害する行為のことをいいます。

これは、憲法第28条に定められている労働三権を実質的に保障するために、違法性を阻却するものです(労働者の権利を超えて犯罪行為に及んだ場合等には、違法性は阻却されません)。

憲法第28条
勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。

自救行為

権利を侵害された者が、その回復を図るのに法律上正式な手続を踏んで国家機関の救済を待つとすれば、時機を逸してその回復が事実上不可能あるいは著しく困難になる場合に、私人自らがその実力で回復を図る行為をいいます。

例えば、窃盗事件の現場で、被害者が窃盗犯から盗品を実力で取り返したような場合をいいます。

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この記事を書いた人
ゴリップル

不労所得での生活を夢見るオスゴリラ。マッサージと節約が大好き。サビ残は大嫌い。職場で『ふるさと納税』『iDeCo』『つみたてNISA』の普及活動を推進。仮想通貨投資では10年先を見据えてXRP(リップル)に投資中。詳しいプロフィールはこちら

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